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「遙かなる国へのときめきと憧れ」

 

「ショパン」2019.11月号 藤巻 暢子

​寺田まりピアノリサイタル~舞曲への誘い~

​9月1日 ハクジュホール の演奏会から

1曲目、ファリャの「スペイン舞曲第一番」からエキゾティシズムに酔う。続くグラナドス「12のスペイン舞曲」より「アンダルーサ」は、絵巻物の華やぎ、微妙に揺れるリズム、漂う哀愁が魅力的。「オリエンタル」の繊細なノスタルジー「ロンダーリャ・アルゴネーサ」の抒情にも魅了される。ショパンのワルツ作品64の3の生き生きとエレガントなフレージング、洗礼されたルバートはパリの贈り物?作品42「大円舞曲」の成熟した手腕は夢と幸福感を運ぶ。続くファリャの「火祭りの踊り」は冒頭のとりるのクレッシェンドがデモーニッシュで、ミステリアスな音楽を導く。ヒナステラ「アルゼンチンの舞曲」の「年老いた牛飼いの踊り」では天性のリズム感と現代性が噴出!「粋な娘の踊り」は、もの憂いな雰囲気に美しい旋律が心に染み入る。「やくざなガチョウの踊り」のJazzyな感触、眩いテクニックとリズム感は鮮烈!後半、チャイコフスキー=バブスト=ハフ「眠りの森の美女パラフレーズ」は劇的な幕開けに続く甘美なワルツが綺麗なテクニックに彩られ絢爛豪華!ブレトニョフ版に劣らず斬新。ラヴェル「ラ・ヴェルス」。スコアを丁寧に読み取り、声部の表現にも趣向を凝らし、作品の混沌とした世界を鋭くとらえていた。

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