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MARI TERADA
寺田 まり
「大胆でアグレッシブなピアニズム」
「ショパン」2012年3月号
寺田まり デビュー15周年記念リサイタルから
筆者は10年ほど前に初めて彼女を聴いたとき、そのスケール感に強い印象を受ける一方、粗削りな部分も散見され、ここに解釈の精緻さと表現のきめ細かさが加わればもう一段上を期待できると思ったものだが、久々に拝聴してその予感が間違っていなかった事を知った。 冒頭はリスト。<愛の夢>第3番ではクライマックスへの登擧と下山の設計がみごと。バラード第2番では海の唸りを思わせる迫真のバスが響く。続くドビュッシーは<月の光>と<雨の庭>。後者が秀逸。テンポの速い曲のほうが彼女の持つゆたかな音色のバレットが生きるようだ。いよいよ、岩崎淑が低音部にまわったラヴェル<ラ・ヴァルス>。あたかも4本の手を持つヴィルトゥオーゾが弾いているかのように、リズムの齟齬のない快心のアンサンブルである。それでいて、両者の音色感の違いが作品の奥行を深くした。後半はムソルグスキー<展覧会の絵>。<グノム><ヴィドロ><ゴールデンベルクとシュミイレ>、そして終盤2曲に彼女の大胆でアグレッシブなピアニズムが炸裂した。
(1月4日東京文化会館小ホール)
萩谷由喜子
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