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「楽曲と一体化した能弁さが際立ち圧巻」

「音楽の友」2010.2

ショパンとシューマン生誕200周年記念リサイタルから

寺田まりは、エッセン音大、パリ、エコール・ノルマル音楽院などで学び、独奏や室内楽などを中心に国内外で活躍している。「ショパンとシューマン生誕200周年記念リサイタル」と題し、メモリアル・イヤーならではのプログラミング。前半はショパン「ノクターン第1番」「バラード第1番」「ワルツ第7番」「ノクターン第20番」「舟歌」など、後半がシューマン(クライスレリアーナ)。まずは、心に秘めた繊美な質感を「ノクターン第1番」で聴かせ、そしてバラード、ワルツなどとショパンのピアニズムの精髄をちりばめながら、あたかも物語的構成を垣間見せるかのように聴き手を巧みにショパンの世界へと誘う。欲をいえば、感情起伏の動線を頂きまで描ききる彼女なりのより冴やかなショパン像が欲しかったといえなくもないが、転じて後半の〈クライスレリアーナ〉では、俊敏かつデリケートなニュアンスにより玄妙な陰影を醸しつも、確信に満ちた生気が漲り顕然なシューマン像を聴かせた。特に第7曲ゼア・ラッシュは楽曲と一体化した寺田の能弁さが際立ち圧巻であった。
〈1月12日・東京文化会館(小)〉

高山直也

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