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「華やぎと大胆な表現力」

寺田まり 3eme CD リリース記念コンサートから

「ショパン」  2017年2月号

3幼少より家族と共に渡米、渡欧。パリでは名匠ムニエ女史の薫陶を受けた寺田の演奏は、洗練された感性がもたらす華やぎと、大胆で自由な表現が表現力に満ちていた。プログラミングも、彼女の持ち味が充分発揮される構成で、1曲目リスト《ウィーンの夜会》のダイナミックなプロローグと共にコンサートの幕が上がった。続くプーランクの《即興曲》2曲はパリのエスプリを伝え、とりわけ第15番〈エディット・ピアフを讃えて〉は、心に染み入るメロディーが秋の風情に溶け込むよう。ロシアのものに移り、ラフマニノフの《前奏曲》作品32-23においてはロシアの荒涼たる原野のイメージと哀愁を、作品23-5では荘厳でドラマチックな世界を、練習曲《音の絵》作品33-8は重く深い叙情を、作品39-4では独特の民族的色彩を、それぞれ繊細かつ大胆に表現し、作品の個性に迫る。
ゴドフスキー編曲サンサーンスの《白鳥》は、難曲であるが、自然体の美しさが秀逸。前半のトリ、リストの《リゴレット・パラフレーズ》は、客観的な構成力が今後の課題かもしれないが、荘厳なヴェルトゥオージティと共にドラマを盛り上げて行く演出がみごと。後半は、シューマンの《謝肉祭》。彼女は音楽の言葉を持っており、時に軽妙に、時に劇的に語りかけ、聴衆を引っ張っていく。大きなフレージングと巧みなルパート。そしてエレガンスと自己主張を貫く果敢さも備わり、シューマンのロマンティシズムを伝えていた。
(2016年11月6日 ヤマハホール)


 

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